視覚障がいの方がプレーをする場合は、ガイドをするパートナーの同行が必須です。全盲ゴルファーの後藤さんの場合は奥様のリカ子さん抜きには語れませんので、リカ子さんの思いも盛り込みました。お二人とご一緒にプレーをして感じますのは、毎ショット毎にリカ子さんがコースの状況を後藤さんに伝え、打ってゆく方向を決め、ボールとクラブヘッドのセッティングをして、後藤さんがその上でイメージ通りに打てるかがポイントで、我々が1人で行なっていることを文字通りお二人の二人三脚でプレーをされていて、息が合った時はパーも取るゴルフです。
網膜色素変性症により、昭和61年34歳の時に全盲となりました。
一種一級の身障者です。
全盲になって、出来ないことを探すより、はるかに出来ることの方が少ない状況で現実を受け入れられず落ち込んでいました。そのような日々を過ごしていた45歳の時、妻がたまたま見た雑誌にブラインドゴルフの記事があり、「とにかくやってみない?」と、妻に背中を押されてゴルフを始めました。
二人ともゴルフの経験は全くなかったし、周りにやっている人が一人もいませんでしたので、孤独の中本当に試行錯誤の連続でした。とにかく、二人で遮二無二ボールを打ちました。目線の下にグリップが来るのを感じるために、五円玉に紐を結びその紐を口にくわえたり、頭を壁に付けて体の動きを覚えたり等々、出来ることの全てを試してみましたが中々上達しません。
このような状況でもあり、時々私がゴルフを止めたい等と言うこともあり、妻は私にゴルフを始めさせたことを何百回後悔したか分からないとよく語っていました。
広々とした芝生の上を気持ちよく歩けること。自然の匂いや風を体中に感じる幸せです。
そしてゴルフを通してたくさんの友人と出会えたことです。
コースは平らな所などは無いに等しいので、中途全盲であるために如何にボールに正対できるかの基準となる点を見つけることが一番難しいことです。また、これが出来ればある程度の確率でナイスショットも出るので、好スコアも不可能ではないと思います。
旧知の障がい者ゴルファーの誘いのおかげで、設立当初から参加しました、JHGAの例会・大会に出来るだけ出席、参加をすることが私達に出来る唯一の協力ではと思っています。
それから、ゴルフにあまり自信がない障がい者でも、参加して見ようかな? と思えるようなハードルの低い会であって欲しいと思います。
ゴルフは障がい者でも健常者と同じルール、同じ場所で出来る数少ないスポーツだと思います。一昨年世界大会で全盲の部門で準優勝になり、また初めて99でも回ることが出来ました。今後とも技量を磨き、自分の身体のハンデなぞ忘れて健常者と競える様になりたい。
私たち視覚障がい者ゴルファーが他の障がい者ゴルファーと唯一異なる点は、ガイドがいないとプレーができないことです。初めてのゴルフ場でのことを都度々々事細かく説明したり、迷惑を掛けない旨等のお願いをしなくてもプレーができるようになって欲しいと願います。
また、盲導犬もどこでも受け入れられるようになって欲しいですね。
(盲導犬を入れるとコースが痛むと言われた事がありましたが、タヌキやキツネ 、クマはコース内を闊歩しているのでは? 屁理屈でしょうがと思うこともありますが。みなさんの善意や協力で盲導犬が誕生しても、受け入れが叶わないのは本当に悲しい事です。)
この原稿は『ザ・挑戦 II ゴルフと出会って人生が変わった』(NPO法人 ジャパン・ハンディキャップゴルフ協会、2012 発行)より許可を得て転載しております。